AIを導入したい。でも費用がネックで踏み出せない。
そんな中小企業の経営者にまず知ってほしい数字があります。AI研修にかかる費用が、最大75%戻ってくる助成金があるんです。50万円の研修なら、自己負担は実質12.5万円まで下がる。
この75%を出してくれるのは「人材開発支援助成金(厚労省)」。さらに、AIツール導入費を最大80%補助してくれる「デジタル化・AI導入補助金(経産省)」もあります。2025年末に閣議決定された「AI基本計画」を受けて、2026年はAI関連の支援制度が過去最大級に手厚い年になっています。
僕はクライアントにAI導入を支援していますが、「え、こんな制度あるんですか?」と驚かれることがほんまに多い。知っているかどうかだけで、導入コストが半分以下になるケースもあります。
この記事では、中小企業がAI導入で使える助成金・補助金を6つに絞って、補助額・申請スケジュール・選び方まで全部まとめました。「うちはどれが使えるの?」がこの記事だけで判断できる構成にしています。
※この記事の情報は2026年5月時点のものです。最新の公募要領は各制度の公式サイトで必ず確認してください。
補助金と助成金の違い|まず押さえておくべき基本
「補助金」と「助成金」、似ているようで仕組みが違います。ここを知らないまま申請すると、思わぬ落とし穴にはまります。
| 項目 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 審査 | 競争審査あり(採択率50〜60%程度) | 要件審査(要件を満たせば受給しやすい) |
| 管轄 | 主に経済産業省 | 主に厚生労働省 |
| 支払い | 後払い(先に自己負担) | 後払い(先に自己負担) |
| 公募期間 | 締切あり(年4〜6回) | 通年申請可能なものが多い |
ここで誤解してほしくないのは、助成金も「誰でも通る」わけではないということ。書類不備や要件の解釈違いで支給されないこともあります。ただし、補助金のような競争審査ではないので、要件さえ正しく満たせば受給の見込みが立てやすい、という違いです。
もう一つ大事なのは、どちらも「後払い」だということ。先に自分で費用を払って、後から補助金・助成金が振り込まれます。「お金がないから補助金で」は通用しません。ここを勘違いしている経営者が結構多いです。
僕のクライアントでも、「補助金が出るなら先にやりたい」と言ったものの、一時的な資金繰りの部分で止まってしまったケースがありました。事前に資金計画を立てておくことが大前提です。
人材開発支援助成金|AI研修費が最大75%戻る本命の助成金
冒頭で触れた「研修費が75%戻る」のがこの制度です。AI導入を検討している中小企業に、僕が真っ先におすすめする制度でもあります。
人材開発支援助成金の「事業展開等リスキリング支援コース」は、AI活用やDX推進に関する社員研修の費用を最大75%助成してくれる制度です。
助成内容
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 経費助成率 | 75% | 60% |
| 賃金助成 | 960円/時間 | 480円/時間 |
| 上限額(10〜100時間未満) | 30万円 | 20万円 |
| 上限額(100〜200時間未満) | 40万円 | 30万円 |
| 上限額(200時間以上) | 50万円 | 40万円 |
なぜ”本命”なのか
理由は3つあります。
1つ目は、競争審査がないこと。所定の要件を満たしていれば受給できる仕組みです。とはいえ「審査ゼロ」ではありません。書類不備や要件の解釈違いで支給されないこともあるので、事前に管轄の労働局に確認しておくと安心です。
2つ目は、「AI研修」が対象であること。社員にAIの使い方を教える研修であれば、外部講師への委託費も助成対象になります。
3つ目は、この制度が令和8年度末(2027年3月末)までの期間限定だということ。いつまでもある制度ではありません。
僕の事業でもAI研修を提供していますが、この助成金を活用するクライアントが増えています。たとえば50万円の研修費用が実質12.5万円になる。これを知っているかどうかで、AI導入の最初の一歩のハードルがまったく違ってきます。
「補助金は採択されるか不安」という経営者には、まずこの助成金から始めることをおすすめしています。社員がAIを使えるようになれば、その後のツール導入もスムーズに進みます。
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)|ツール導入費を最大80%補助
2026年から名前が変わりました。中身も「AI活用」に重点が置かれるようになっています。中小企業がAIツールを導入するなら、まずこの制度を検討してください。
補助額・補助率
| 枠 | 補助額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 通常枠(1〜3プロセス) | 5万〜150万円 | 1/2(小規模事業者は2/3〜4/5) |
| 通常枠(4プロセス以上) | 150万〜450万円 | 1/2(小規模事業者は2/3〜4/5) |
| インボイス枠(対応類型) | 〜350万円 | 3/4〜4/5(50万円超は2/3) |
| インボイス枠(電子取引類型) | 〜350万円 | 2/3 |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万〜150万円 | 1/2(小規模2/3) |
小規模事業者(従業員20名以下、サービス業は5名以下)の場合、補助率が最大80%まで上がります。100万円のAIツールを導入しても、自己負担は20万円で済む計算です。
2026年の申請スケジュール(通常枠)
| 締切 | 交付決定日 |
|---|---|
| 1次:2026年5月12日 | 6月18日 |
| 2次:2026年6月15日 | 7月23日 |
| 3次:2026年7月21日 | 9月2日 |
| 4次:2026年8月25日 | 10月7日 |
何に使えるのか
登録されたITツール(クラウドサービス・ソフトウェア)の導入費用が対象です。2026年からはAI機能付きツールの絞り込み検索機能が新設され、AIツールを探しやすくなりました。
たとえば、AI搭載のチャットボット、AI-OCR(文書読み取り)、AI会計ソフト、AIによる在庫管理システムなどが対象になります。
注意点
前年度(2022〜2025年)に採択された事業者が2回目の申請をする場合、「賃上げ実績報告」が条件に加わっています。過去に使ったことがある方は要確認です。
僕がクライアントのAI導入を支援するとき、まずこの制度で使えるツールがないかを一緒に探します。実際に、ある小売業のクライアントはこの制度を使ってAI在庫管理ツールを導入し、自己負担を大幅に抑えることができました。「補助金があるなら話が変わる」と、導入の決断が一気に進んだのを覚えています。
ものづくり補助金|独自のAIシステムを開発したい企業向け
既製品のAIツールではなく、自社専用のAIシステムを開発したい場合はこちらです。
概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助額 | 最大4,000万円(大幅賃上げ特例で最大1億円) |
| 補助率 | 1/2〜2/3 |
| 対象 | オーダーメイドのAIシステム開発 |
画像認識AIによる検品システム、AIを使った品質検査、自社業務に特化したAIチャットボットの開発など、既製品では対応できない課題を解決するための開発費用が対象です。
デジタル化・AI導入補助金との違い
| 項目 | デジタル化・AI導入補助金 | ものづくり補助金 |
|---|---|---|
| 対象 | 既製品のITツール導入 | オーダーメイドのシステム開発 |
| 補助額 | 最大450万円 | 最大4,000万円 |
| 難易度 | 比較的低い | 事業計画書が必要(難易度高め) |
| 向いている企業 | 市販のAIツールで課題が解決する企業 | 独自のAIシステムが必要な企業 |
僕の経験上、従業員30名以下の中小企業であれば、まずはデジタル化・AI導入補助金で既製品のAIツールを導入するのが現実的です。オーダーメイド開発は費用も大きくなるので、まず既製品で効果を実感してから検討する、という順番をおすすめしています。
なお、2026年度後半には「新事業進出補助金」との統合が予定されています。制度が変わる前に申請を検討したほうがよいでしょう。
中小企業省力化投資補助金|物理的な設備のAI化に
AIソフトウェアではなく、AI搭載の物理的な設備を導入したい場合に使える制度です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カタログ型 | 最大1,500万円(申請が比較的簡単) |
| 一般型 | 最大1億円 |
| 対象 | AI搭載ロボット、無人受付システム、AI検品装置など |
製造業でAIによる検品ラインを導入したい、飲食業でAI配膳ロボットを入れたいといったケースで活用できます。
小規模事業者持続化補助金|小さく始めたい個人事業主向け
従業員20名以下(サービス業は5名以下)の小規模事業者が対象です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限 | 50万円(特例で最大250万円) |
| 補助率 | 2/3(赤字事業者は3/4) |
補助額が小さいため、大規模なAI導入には向きません。ただし、月額数千円のAIツールの年間利用料や、AI活用のための小規模な環境整備には使えます。
「まずは小さく試してみたい」という個人事業主には選択肢になります。
あなたの会社にはどれが合う?|助成金・補助金の選び方ガイド
6つの制度を紹介しましたが、「結局どれを使えばいいの?」が一番知りたいところだと思います。
判断の軸はシンプルです。まず、何をしたいのかを決めてください。
- 社員にAIの使い方を教えたい → 人材開発支援助成金(競争審査なし・75%助成)
- 市販のAIツールを導入したい → デジタル化・AI導入補助金(最大80%補助)
- 自社専用のAIシステムを開発したい → ものづくり補助金(最大4,000万円)
- AI搭載の設備・機器を導入したい → 省力化投資補助金(最大1.5億円)
- 小さくAIを試してみたい → 小規模事業者持続化補助金(最大50万円)
僕がクライアントに案内するときは、「まず人材開発支援助成金でAI研修を受けて、使い方を覚えてからデジタル化・AI導入補助金でツールを入れる」という2ステップを提案することが多いです。
研修で「AIってこう使えばいいのか」がわかった状態でツールを入れるから、導入後に「誰も使わない」という失敗を避けられる。制度を組み合わせることで、トータルの自己負担をかなり抑えられます。
ちなみに「そもそも自社の何にAIを使えばいいかが分からない」という段階の方は、AI導入、何から始める?従業員10人以下の会社がまずやるべきことを先に読んでみてください。
補助金申請で絶対やってはいけない3つのこと
制度を知っているだけでは不十分です。申請で失敗する経営者には共通するパターンがあります。
1. 交付決定前に契約・発注してしまう
これが一番多い失敗です。補助金は「交付決定」が出てから契約・発注しないと、補助対象になりません。
「早く導入したいから」と先に契約してしまい、後から補助金を申請しても対象外になります。焦る気持ちはわかりますが、必ず交付決定を待ってください。
2. 事業計画書を「制度側の目線」で書かない
ものづくり補助金や新事業進出補助金では、事業計画書の質が採否を分けます。
よくある失敗は、「うちの会社にとってどれだけ便利になるか」だけを書いてしまうこと。審査員が見ているのは「この投資で生産性がどれだけ上がるか」「地域経済への波及効果があるか」といった、制度の目的に沿った視点です。
3. 申請を全部自分でやろうとする
小規模な補助金であれば自分で申請できます。ただし、ものづくり補助金のような大型制度は、採択実績のある専門家に相談することをおすすめします。
申請支援の費用は、採択された場合の成功報酬型が一般的です。「自分でやって不採択」より「専門家に頼んで採択」のほうが結果的にコストが安くなることが多い。
僕自身はAI導入の支援が専門で、補助金申請の代行はしていません。申請手続きについては、顧問の税理士・社労士やグループ会社の担当の方など、普段から会社の実務をサポートしている方に相談するのが確実です。AI導入と補助金申請、それぞれの専門家がチームを組むのが一番うまくいくパターンです。なお、よくある失敗パターンは AI導入で失敗する中小企業の3つのパターン にもまとめています。
なぜ2026年がAI支援制度の狙い目なのか
最後に、「いつ申請するか」の話をします。
2025年末に閣議決定された「AI基本計画」では、政府がAI関連に1兆円規模の投資を行う方針が示されました。デジタル化・AI導入補助金の予算が約3,400億円に設定されているのも、この方針の一環です。
さらに、人材開発支援助成金のリスキリング支援コースは2027年3月末までの期間限定です。ものづくり補助金と新事業進出補助金は2026年度後半に統合が予定されており、制度設計が変わる可能性があります。
つまり、今ある制度がこのまま続く保証はありません。
クライアントにAI導入を支援する中で強く感じているのは、「使える制度があるうちに動いたほうがいい」ということです。補助金は予算が決まっているので、申請が集中すれば採択率は下がります。早い締切回のほうが競争が緩い傾向にあるのも事実です。
「そのうち申請しよう」と思っている間に、締切が過ぎていた。そういうケースを何度も見てきました。
まとめ|まず確認すべきは2つだけ
AI導入で使える助成金・補助金は、探せば意外とたくさんあります。
ただ、全部を理解する必要はありません。中小企業の経営者がまず確認すべきなのは、この2つです。
- 人材開発支援助成金 — 競争審査なしでAI研修費用の75%が助成される。2027年3月末まで
- デジタル化・AI導入補助金 — AIツール導入費用の最大80%が補助される。次の締切は2026年5月12日
この2つを組み合わせるだけで、「AI研修 + ツール導入」のトータルコストを大幅に抑えられます。
「AIは気になるけど費用が…」と立ち止まっている方は、まず制度が使えるかどうかだけでも確認してみてください。知っているだけで、選択肢が変わります。費用感を先に把握しておきたい方は AI導入の費用相場|中小企業は月額いくらで始められるか も参考にしてください。
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