商談前の下調べはAIで10分|社長の勝率が変わる事前準備

明日、初対面のクライアント先で商談がある。相手会社のホームページをざっと見て、社長の名前と事業内容くらいは覚えていく。これが多くの経営者の商談前準備だと思います。

僕も以前はこのレベルでした。

でも、本来やるべき下調べはこれだけじゃありません。相手の業界トレンド、最近のニュース、競合状況、相手が抱えていそうな課題、想定される質問への答え。ここまで揃った状態で商談に入ると、相手の食いつきが完全に変わります。

結論から言うと、この一連の下調べはAIで10分で完結します。ホームページを目で追う時間より速い。しかも、人間が手作業でやるより深い情報が揃う。

僕は今、商談1件につき必ず10分の下調べをAIにやらせてから出向いています。これを習慣にしてから、初回商談での「あ、この人は分かってる」と感じてもらえる頻度が体感で3倍以上になりました。具体的には、初回商談からの成約率も明確に上がっています。実際に、以前から担当していただいている地域の信用金庫の方との商談では、10分の事前準備をベースにしたデモ提案で「これは革命だ。本部に推薦したい」とまで言ってもらえた。この経験はこの記事の後半で詳しく書きます。

この記事では、商談前の下調べをAIで10分で完結させる5ステップと、コピペで使える下調べプロンプト3種を全部書きます。明日の商談から使えるレベルで具体的に書いているので、読み終わった時点で実装できます。

福田 龍馬

福田 龍馬|株式会社Lib 代表取締役

中小企業のAI導入支援・AI顧問を専門にしています。現場で使えるAI活用フローを伴走で構築中。

目次

なぜ商談前の下調べを経営者は省略しがちなのか

商談前の下調べが甘くなる理由は、サボっているからじゃありません。時間がないからです。

経営者の1日は、社内ミーティング、メール返信、現場確認、商談、また移動。商談1件のために30分の下調べをする時間が、現実的に取れない。

「ホームページをざっと見ればいいか」という妥協が日常的に発生する。これは僕も含めて、多くの経営者がやっていることです。

ただし、ここに落とし穴があります。

商談相手は、自分の会社のことを誰よりも分かっています。10分で読める情報を、こちらが10分で吸収していないと、初回の30秒で「あ、この人ちゃんと調べてないな」が伝わってしまう。逆に、相手の業界の最新トレンドを1つ知っているだけで、「この人、業界のことを分かってる」と一気に評価が上がります。

下調べの差は、商談の最初の30秒で読み手にバレる。それくらい重要なのに、時間がなくて省略している。これが多くの経営者が抱えている矛盾です。

ここを解決するのがAI活用です。10分で30分相当の下調べが終わるなら、サボる理由がなくなる。

AIで10分でできる商談前下調べの全体像

具体的なステップに入る前に、何を10分で集めるのかを整理しておきます。

商談前の下調べでAIに揃えさせる情報は5つです。

# 集める情報 所要時間 使うツール
1 相手会社の基本情報 2分 ChatGPT/Claude(一般情報)
2 相手の業界トレンド 2分 ChatGPT/Claude
3 相手企業の想定課題 2分 ChatGPT/Claude
4 商談で聞くべき質問リスト 2分 ChatGPT/Claude
5 想定される質問と回答 2分 ChatGPT/Claude

合計10分。コツは、それぞれを別の指示として連続で出すこと。1つのプロンプトに「全部やって」と頼むと出力が薄くなります。

10分で完結する5ステップ

ここからが本題です。各ステップで実際にAIにどう指示するかを、具体的に書きます。

Step 1:相手会社の基本情報を整理させる(2分)

まずChatGPTかClaudeに、相手会社の基本情報をまとめさせます。

「A社(業種:製造業、所在地:大阪府)について、公開情報から以下を整理して。1.事業内容、2.主力製品・サービス、3.従業員規模、4.直近の経営方針や発表、5.経営者の経歴」

2分で会社の輪郭が掴めます。Step 1で得るのは「相手のプロフィール」。ここがズレていると、その後の商談全部がぶれます。

僕がこれを始める前は、相手会社のホームページを開いて、自分の目でぐるぐる読んで、メモを取って…と15分くらいかけていました。AIに任せると2分で整った形で出てくる。情報の抜け漏れも少なくなりました。

Step 2:相手の業界トレンドをまとめさせる(2分)

次に、相手の業界全体のトレンドをAIにまとめさせます。

「製造業(中小企業)の2026年現在のトレンドと課題を整理して。人手不足、技術継承、AI活用、補助金活用、海外展開などの観点で、業界全体が直面している論点を箇条書きで」

これがあると、商談で「業界のこと、分かってます」というシグナルが自然に出せる。「最近の業界の動きを見ていると、人手不足の課題が深刻化していますよね」と切り出すだけで、相手の警戒心がガクッと下がります。

僕の実感ですが、初対面の商談でいちばん相手の心を開くのが、業界トレンドへの理解の深さです。製品の話より先にここに触れると「この人と話すのは時間の無駄じゃない」と感じてもらえる。

Step 3:相手企業の想定課題を仮説立てさせる(2分)

ここが下調べの中で一番効果が出るステップです。

「Step 1とStep 2の情報を踏まえて、A社が今直面している可能性が高い経営課題を5つ仮説として挙げて。優先度の高そうな順で」

AIが5つの仮説を出してきます。例えば「ベテラン社員の退職リスク」「新規顧客獲得の伸び悩み」「人件費の上昇圧力」など。

商談ではこの仮説をそのまま投げるんじゃなく、「最近の同業のお客様から、こういう声をよく聞くんですけど、御社はどうですか」と質問の形に変えて投げる。仮説が当たっていれば、相手は驚きます。「うちもまさにそれが課題で…」と一気に話が深くなる。

Step 4:商談で聞くべき質問リストを作らせる(2分)

仮説が出たら、それをベースにヒアリング用の質問リストを作ります。

「Step 3の課題仮説をベースに、商談で相手にヒアリングすべき質問を10個作って。最初は答えやすい一般的な質問、後半に踏み込んだ質問を入れる構成で」

10個の質問リストが出てきます。これをスマホのメモにコピーしておけば、商談中に「次は何を聞こうか」と頭で考えなくて済む。

僕は商談中、このリストをチラッと見ながら進めることがよくあります。質問の切り替えがスムーズになり、商談の流れが詰まらなくなる。

Step 5:想定される質問と回答を作らせる(2分)

最後に、相手から自分が聞かれそうな質問と、その回答を準備します。

「自分のサービス(業務効率化のAI導入支援、3ヶ月の伴走型パッケージ)について、製造業の経営者から聞かれそうな質問を10個と、それぞれへの回答を300字で作って」

これがあると、商談中に「考え込む時間」がゼロになります。相手の質問にすぐ答えられる。「この人、慣れてるな」という印象が残る。

僕は商談前に必ずこのリストを目を通してから出向きます。10個全部覚える必要はなくて、「こういう質問が来そう」と頭に入れておくだけで、本番の落ち着き具合がまるで違います。

コピペで使える下調べプロンプト3種

5ステップを毎回ゼロから書くのは面倒なので、僕が普段使っているプロンプトテンプレを3種類そのまま貼ります。

プロンプト1:会社・業界・課題を一括整理

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あなたは中小企業の経営者の商談前準備を支援するコンサルタントです。

以下の会社について、商談で使える情報を整理してください。

【相手会社情報】

  • 会社名:
  • 業種:
  • 所在地:
  • 規模(分かれば):

【整理してほしい項目】

  • 会社のプロフィール(事業内容・主力サービス)
  • 業種全体の現在のトレンドと課題
  • この会社が直面している可能性が高い経営課題(優先度順に5つ仮説で)

それぞれ箇条書きで、商談で会話の糸口にできる粒度で書いてください。

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最初に投げるのはこれ1つ。Step 1〜3が同時に終わります。

プロンプト2:商談ヒアリング質問リスト

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プロンプト1で出した会社情報と課題仮説をベースに、

商談で相手にヒアリングすべき質問を10個作ってください。

【条件】

  • 最初の3問は答えやすい一般的な質問
  • 中盤の4問は事業の中身に踏み込む質問
  • 最後の3問は意思決定者の課題感や予算感に触れる質問
  • 各質問に「なぜこの質問をするか(自分のメモ用)」も1行添える

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ヒアリング設計までAIに任せると、商談の流れが自然に組み立つようになります。

プロンプト3:想定問答リスト

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私のサービス(以下に記載)について、

プロンプト1の相手会社(業種・規模・課題)の経営者から

聞かれそうな質問と、それぞれへの回答を10セット作ってください。

【私のサービス】

  • サービス名:
  • 内容:
  • 期間:
  • 過去の類似事例:

【条件】

  • 各回答は200〜300字
  • 専門用語は最小限
  • 競合比較を聞かれた場合の答えも含める
  • 価格交渉を持ちかけられた場合の答えも含める

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商談前にこれを5分で読み返すだけで、当日の余裕が劇的に変わります。

実際にあった話|10分の準備が、信用金庫の担当者を動かした商談

ここで、僕が「下調べ10分の威力」を一番強く実感した具体的な体験を書きます。

以前から担当していただいている地域の信用金庫の方と、中小・零細企業へのAI紹介の話を本格的に進める商談がありました。担当者は普段の付き合いはあるものの、「AIで具体的に何ができるか」のイメージは持てていない段階で、相手の取引先である中小・零細企業へどうAIを届けられるかを一緒に模索していたタイミングでした。

普段から会っている相手だったので、形式的な顔合わせで終わる商談ではない。だからこそ、その日の10分の準備で「次の一歩」を相手に持ち帰ってもらえるかどうかが分かれ目になる商談でした。

訪問前、AIに以下を10分で整理させました。

第一に、信用金庫業界のトレンド。「地域金融機関のDX推進状況」「取引先中小企業のデジタル化支援が新しい収益源になっている事例」「金融庁の地域活性化方針との接点」あたりの整理。これで業界課題を頭に入れて行けた。

第二に、担当者の想定課題。「AIを取引先に紹介したいが、自分自身がAIで何ができるかをイメージできていない」「取引先の中小・零細企業はアナログ運営が多く、AI活用の入口すら見えていない」という仮説。

第三に、想定問答。「信用金庫として何が提供できるのか」「コストはどれくらいか」「導入の手間はどうか」など、担当者が聞いてきそうな質問への答え。

ここまで揃えて訪問しました。

商談の冒頭、業界課題に触れるところまでは想定通り。担当者は「やっぱりそういう課題感は持っていました」と一気に話に乗ってきました。

そこから、AIで何ができるかを「説明」ではなく「目の前で実演」する流れに切り替えました。具体的には2つのデモを10分で見せた。

1つ目は、メール自動生成ツールのデモ。担当者の実際の取引先(複数社)の情報を口頭で聞き、その場でAIに「複数の取引先に送るカスタマイズメール」を3パターン生成して見せた。「これ、これからの営業活動で使えますね」と即反応がありました。

2つ目は、コーポレートサイトの即席制作デモ。「老舗の製造業向けに新しいホームページを30分で作るとしたら」という設定で、AIに指示書を作らせ、約10分でほぼプロクオリティのコーポレートサイトの試作品を組み上げて見せた。

このデモを見せた瞬間の担当者の反応が、今でも記憶に残っています。

「これは革命だ」「思いも寄らなかった」

その場で担当者は、「これを信用金庫の本部に報告したい」「本部から全面的にバックアップしたい話に持っていきたい」と自ら申し出てくれました。地域の中小・零細企業数十〜数百社への展開可能性を、担当者自身が強く確信した瞬間でした。

この体験で僕が学んだのは、「説明」より「実演10分」のほうが、100倍の説得力を持つということです。ただ、その実演を成立させていたのは「下調べ10分」のほうでした。下調べなしで「とりあえずデモを見せます」と来ていたら、担当者の課題に刺さらない一般論のデモになっていた。下調べに基づく仮説(担当者が抱える課題)があったから、その課題にピンポイントで響くデモを選べた。

10分の事前準備は、商談中の「具体的に刺さる提案」を可能にする。これが、この記事で一番伝えたいことです。

試してわかった3つの落とし穴

便利な反面、最初は僕もハマった落とし穴が3つあります。

落とし穴1:古い情報の混入

AIが出してくる情報は、学習データの時点に依存します。「直近3ヶ月の業界ニュース」のような最新情報は、別途確認が必要です。

対処法は、Step 2で出してきた業界トレンドのうち、商談で使う気がある項目はGoogleで1分だけ裏取りすること。「この記事の情報は2024年時点」と書いてあったら最新化する。

落とし穴2:仮説を「事実」と決めつけてしまう

Step 3の課題仮説は、あくまで仮説です。「この会社は人手不足で困っているはず」と決めつけて商談を進めると、相手から「いえ、うちは採用は順調なんですよ」と言われた瞬間に詰まります。

対処法は、仮説を必ず「質問の形」に変えて投げること。「人手不足、深刻化していますよね」じゃなく「最近の同業から人手不足の声をよく聞くんですけど、御社の状況はいかがですか」と聞く。

落とし穴3:AIだけに頼って自分の頭を使わない

下調べを全部AIに任せると、商談中の「とっさの判断」が弱くなります。

僕がやっているのは、AIの出力を読みながら自分でも一度頭に入れ直すこと。「なぜこの会社にこの仮説が当てはまるのか」を自分の言葉で説明できる状態にしておく。これがないと、相手から想定外の質問が来たときに固まります。

AIは下調べの「素材」を作ってくれる。それを「自分のもの」にするのは経営者の仕事です。

下調べが習慣になると商談が変わる

商談前の10分下調べを習慣にすると、商談自体の質が変わります。

僕の場合、習慣にしてから3つの変化がありました。

1つ目は、商談中に「次に何を聞くか」で頭を使わなくなったこと。質問リストが頭に入っているので、相手の話に集中できる。

2つ目は、相手の課題が想定通りだった時に、すぐ深い提案ができるようになったこと。Step 5の想定問答リストをそのまま下敷きにできる。

3つ目は、初回商談から「契約までの距離が近い」と感じてもらえるようになったこと。相手の課題を理解した状態で来ているから、提案が的を外さない。

実は、AI活用で経営者の力が一番試されるのは、こうした「相手の課題を言語化する」という思考プロセスです。複数のクライアント支援をやってきて気づいたんですが、AIへの指示精度が高い経営者ほど、もともと自社や顧客の課題を言葉にする力を磨いてきている。経験豊富な40〜50代の経営者ほど、AI活用の質が一気に伸びるのは、これが理由です。デジタル得意かどうかではなく、課題解像度の深さがAI活用を決める。

「商談前の10分」と「商談中の60分」の質は、完全に連動します。10分の準備が60分の質を決める。これに気づいてから、僕は下調べをサボらなくなりました。

商談直後の議事録作成についても、同じく音声で完結する仕組みがあります。詳しくは 移動中の30分を執務時間に変える|ChatGPT音声で社長の仕事術 にまとめています。商談直前に車中で下調べ→商談→車中で議事録、という流れが完成します。

まとめ|来週の商談、5分だけ試してみてください

商談前の下調べをAIで10分で済ませる5ステップは以下です。

  • 相手会社の基本情報を整理(2分)
  • 業界トレンドをまとめる(2分)
  • 相手企業の想定課題を仮説立てる(2分)
  • 商談で聞く質問リストを作る(2分)
  • 想定問答リストを作る(2分)

プロンプトテンプレ3種は記事内に貼ったので、そのままコピペして使ってください。

「忙しくて下調べが甘くなる」という状態は、経営者にとって本当にもったいない。10分で勝率が上がるなら、やらない理由がない。

来週の商談1件、5分だけでいいので試してみてください。プロンプト1(会社・業界・課題を一括整理)に相手会社の名前を入れて、ChatGPTかClaudeに「この会社の3つの課題仮説を出して」と聞くだけ。出てきた仮説を商談の冒頭で使ってみると、商談の入りが今までと違うのが体感できます。

商談で使った後の提案資料は、NotebookLMで提案資料を30分で作る方法にまとめた仕組みで30分で作れる。下調べ10分・提案資料30分・議事録は移動中に音声で完結。これが僕の商談1件あたりの作業時間の現実です。

明日の商談から、勝率を上げる10分を取り戻してください。

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